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それまでにも、この種の問題に対処した経験が数えられないくらいあったからです。 「わかりました。
とにかくA社さんに伺って、まずは事実関係を確認してみます」さっそくA社の駐在員の方(アドミニストレーションーマネージャー)にお会いし、問題の雇用契約書を見せてもらうことにしました。 A社は日系のメーカーです。
二代目社長が新素材をつかってユニークな製品を開発し、日本で大成功。 その余勢を駆って、ニューヨークにも店舗展開を図ったのです。

問題とされる契約書は、A社米国法人の実質的な経営を任されたアメリカ人とのあいだでとり交わされたものでした。 お聞きすれば、そのアメリカ人がかなりの報酬を取って困っている、なんとか下げられないか、という相談です。
おずおずと差し出された雇用契約書のコピーに目を通し、私はびっくりしてしまいました。 今まで経験した数々の契約書と比べても、内容のトンデモなさが群を抜いていたからです。
まず、給与が高すぎます。 いくら経営者クラスとはいえ、その額は同等の職務における給与レンジの上限をはるかに上まわっていました。
なぜそのことがすぐにわかるかというと、あとで詳しく述べますが、アメリカにおける給与水準の詳細なデータベースを持っているからです。 私たちはそれを基準にして、現地採用の経営者から受付譲に至るまで、あらゆる職種の給与額設定に関してアドバイスしています。
「給与を決める前に、私たちに相談してもらえたら、この70%程度には抑えられたのになあ」そんなことを思いながら、次の条項に目を移してさらに仰天。 「アメリカにおける売上高の10%を賞与とする」という内容が書き込まれていたからです。
それだけではありません。 「主力商品のアメリカにおける商標権や販売権は、すべて自分に帰属する」という内容を書き加えた挙げ句、最後に「この雇用契約は10年後に見直すものとする」ということまで記されていました。
高額な固定給に加えて、数々のベネフィットやライセンス権を上乗せし、「商品の権利を持っているオレを解雇したら、アメリカで商売ができなくなるぞ」としたうえで、毎年億単位の報酬を得る権利の有効期間(つまり、このアメリカ人の雇用期間)を10年もの長きにわたって保証する要するに、この契約書はそういう内容です。 常識では考えられないほどメチャクチャ。

「なんとか報酬額を下げられないものか」というレベルの問題ではありません。

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